「今年度のGDPは前年比マイナスで……などとアナウンサーが
読み上げているのを聞くことがよくあるでしょう。
GDPが国全体の経済活動の良し悪しを示す数値であることは知っていても、
その中身について実はよく知らないという方も多いかもしれません。
まずはGDPがいったい何なのかを学んでおきましょう。

マクロ経済学の課題は国民経済全体を分析することですが、
そのためには、
経済活動の大まかな動きを何らかの指標で表す必要があります。
GDPは、ある国の一定期間
(たとえば1年間)の経済活動の大きさを測る指標としてさまざまな指標のなかでも
最も有益な指標と考えられており、現在、最もよく用いられています。
GDP (国内総生産、GrossDomestic Product) とは、
ある一定期間にある国内で
新しく生産された財やサービスの付加価値の
合計のことをいいます。
一方、GNP「国民総生産」、(Gross National Product)は、
一つの国の国民が国の内外関係なく稼いだ付加価値*の合計です。
生み出された製品・サービスなどの価値の中で、
それぞれの会社がその活動自体から生み出し、付け加えた価値のこと。
例を挙げると、東京都内にあるパンの店A店が他の店なら
定価500円で売っているアップルパイを3000円で販売しているとします。
しかし、この店ではアップルパイが他の店より売り上げが高いのです。
この状態を付加価値がついていて、価値が高い状態と言えます。】
以前はマクロ経済活動の代表的な指標としてGNPがよく用いられていましたが、
90年代頃からはGDPのほうが用いられるようになっています。
フローとストックは、
ある一定期間中に生み出された付加価値の量を示します。
これに対して、ある時点までに貯めこまれた資産を「ストック」といいます。
フローとストックの概念を区別することはとても重要です。
GDPは、ある一定の期間のうちにどの程度、国民経済にとって
利用可能な資源が増加したかを示しているものです。
単純にそれぞれの生産額を合算したものではありません。
たとえば、次のような例を考えてみるとわかりやすいでしょう。
ある外食企業は1年間にパンを1億円、肉を1億円仕入れて、
4億円のハンバーガーを 売り上げているとします。
この企業の付加価値は、4ー1ー1=2億円です。
4億円の売上があっても、そのうち原材料の2億円は
すでに他の企業で生産されたものですから、新しく生み出されたではありません。
新しく人と機械を投入して、他の企業の生産物から
ハンバーガーという新しい生産物を作り出すことで、
この企業は2億円分だけ 経済全体の生産活動を
増加させることができるのです。
GDPには生産機械の価値の目減り分が含まれるGDPのなかには、
生産に使われて減耗する(価値が減る)機械などの
減耗分(固定資本減耗)が含まれています。
減価償却といったほうがピンと来る方が多いかもしれません。
たとえば、あなたが100万円の機械を買って、
機械の寿命が10年だとすると、これを使うことで毎年、
機械が減耗して価値がだんだん下がっていき、10年で価値がゼロになります。
その価値の目減り分を表すのが、固定資本減耗です。
GDPには、古くなった設備の更新投資(固定資本減耗分を相殺する投資) も含まれます。
これは新しい付加価値を生み出しませんが、統計的に把握しやすいものです。
本来の付加価値の合計はNDP (国内純生産)の概念に対応しますが、
投資のうちどこからどこまでが新規の設備投資なのか、
固定資本減耗相殺分なのかを 区分けするのは難しいので
GDPから固定資本減耗分を差し引いたものを、NDP (国内純生産)といいます。
これが、純粋にその年に生産された付加価値の額です。
しかし、 市場価格表示の国内純生産のなかには
国民の作り出した価値とは関係のない間接税が含まれています。
他方で、モノの市場価格は、政府から出た補助金の分だけ本来の価格よりも安くなっています。
そこで、国内総生産から間接税を差し引き、
補助金を加えた指標を国民所得(NI)といいます。
参考文献 大学四年間の経済学が10時間でざっと学べる 著 井堀利宏
コメント
コメントを投稿