
1、学習心理学とは
学習に関する心理学で、西欧の伝統的見方からは要素間の連合の成立として扱われ、
アリストテレス以来、同等、対比、時空的接近の三つの規則によるものとされた。
とくに時空的接近が重視されたが、当初は意識内容としての表象や観念の間の連合であった。
実験心理学の進展につれて、
刺激(S)―反応(R)の連合が主題となり、
学習研究は条件づけによる研究と同じ意味にも用いられている。
【※刺激:stimulation 反応:reaction 】
[小川 隆]
2,学習の研究とは
19世紀後半のエビングハウスの記憶研究(人)、
パブロフの条件反射学(犬)、
ソーンダイクの学習実験(猫)などが今日に及んでいる。
エビングハウスは
言語材料の暗記学習(rote learning)を実験したが、主として無意味つづりの配列を用い、
材料の多寡、親近さ、有意味性、呈示順序、反復回数などを条件変化し、
反応時間、反応数、反応量などを比較した。
材料の量が多いほど学習は困難であるが、同量では親近さ、有意味性のあるほど容易である。
反復に対し学習は、一般にS字型の経過をたどって進行することが明らかになったが、
一定順序で項目を呈示すると、初めと終わりでは学習がしやすく(覚えられる)、
中心に近いほど困難になる。
これを系列位置効果という。
また、その後この方法は系列予言法という学習実験法(記憶研究法)として定着した。
パブロフは空腹の犬の唾液(だえき)分泌について条件反射の事実を確かめたが、
ベルの音などの中性刺激を食物と対呈示し(同時に呈示する)、
これを繰り返すうちに、中性刺激だけで食物に対すると同様な唾液分泌の反射を生じさせたのである。
本来、生理に関するこの方法は
古典条件づけ(classical conditioning)
といわれるが、
原理として広く心理学で用いられ、簡単な学習機構の解明に役だっている。
ソーンダイクは、問題箱による動物の学習実験を行ったが、
たとえば空腹の猫を箱に入れ、
戸を開いて出てくることを学習させた。
これを観察して試行錯誤による成功と成功に導く反応が強められ、
不成功に終わる反応が弱められる進行過程を認め、
効果の法則(law of effect)と
練習の法則(law of exercise)を樹立した。
[小川 隆]
3,学習の理論
刺激(S)―反応(R)の接近がその反応を生じやすくするという
ガスリー(E. R. Guthrie)の接近論(Contiguity theory)、
刺激間の認知を強調しその機構を、反応を惹起(じゃっき)する記号体系とみ、
これが要求の事態で学習を成立させるという
トールマンの認知論(Cognitive theory)、
反応間の強化を重視し、要求の低減と強化の回数とを基礎にした仮説構成を扱う
ハルの強化論(reinforcement theory)、
刺激(S)―反応(R)―強化(R)の随伴関係を記述的に扱う
スキナーの実験的行動分析などが代表的なものである。
これらの立場の間に、学習がどのような要因によって規定されるか、
学習過程が1種類か否か、連続的か非連続的かなどが論議されてきたが、
近来は、論点についても領域についても細分化されている。
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