過去の記事を検索

TRANSLATE

浸透圧





1,浸透圧とは



濃度の異なる2種の溶液を半透膜を境として接触させると、

溶質の濃度の小さいほうから濃厚溶液のほうへと

溶媒の移動がおこるナメクジに塩をかけたときを考えればよい


この現象を浸透という。



【以前は「滲透」と書いた。】



このような溶媒の移動を阻止するためには、

濃厚溶液のほうに余分の圧力を加える必要がある。


つまり、半透膜を通して希薄溶液のほうから、

この余分の圧力に相当するだけの圧力がかかっていることになる。



この圧力が浸透圧である。





↑半透膜…一定の大きさ以下の分子またはイオンのみを透過させるである




通常は希薄溶液のかわりに純溶媒を用いて測定したものを「溶液の浸透圧」という。

溶液の浸透圧は溶液の濃度、温度によって変化するが、

あまり濃厚でない溶液については、



ΠVinRT または ΠicRT


が成り立つ。


ここでΠ は溶液の浸透圧、は溶液の体積、

はモル数、はモル濃度(=/)、

はファント・ホッフ係数、は気体定数、は絶対温度である。


非電解質、たとえばアルコールやショ糖などではは1に等しいが、


電解質においては1よりも大きくなる。







これは溶液中で解離がおこるためで、分子数が初めに加えたモル数よりも増加していることを示している。

生理食塩水は0.85%の塩化ナトリウム水溶液であるが、これは動物や人間の体液とほぼ等しい浸透圧を示す




つまり「等張である」という。


赤血球などを純水に投入すると浸透圧のために吸水がおこって破裂するが、

生理食塩水の中では変化しないのはこのためである



 また、濃厚溶液のほうに浸透圧よりも大きな圧力をかけると、

半透膜から逆に溶媒が絞り出される現象がおこるが、

これは逆浸透とよばれ、海水淡水化、廃水処理などに利用が始まっている。

しかし、大きな圧力に耐える半透膜をつくるには、まだかなり困難な問題がある。


[山崎 昶]






2,生物での浸透圧




半透膜を挟んで接する2溶液間の浸透圧は、各溶液の溶媒に対する浸透圧の差に等しい。

細胞の原形質膜(細胞膜)は半透膜の性質をもつため

生物にとっては、体液の浸透濃度を適切な範囲に保つことが、

それと接する細胞の生理的条件を維持するために重要である。


しかし、生体内において、細胞膜はカリウムイオン(K+などに対する

選択的透過性(物質によって膜透過性が異なること)をもち、

また、ナトリウムイオン(Na+カルシウムイオン(Ca2+および

糖やアミノ酸などの能動輸送(濃度勾配(こうばい)に逆らう物質輸送)を行う。

その結果、細胞内外の液の浸透濃度が等しくても、

かならずしも溶媒である水の移動が平衡状態にあるとは限らない。


そこで、ある溶液に細胞を浸したとき、

細胞への水の出入りが均衡し、細胞の体積が変化しないならば、

その溶液を等張液という。

それに対し、細胞から水を奪って

細胞の体積を減少させるものを高張液、

逆に細胞内に水が入って細胞が膨潤するものを低張液という。

たとえば、海水と同じ浸透濃度をもつ塩化ナトリウム(NaCl)溶液

すなわち等浸透液中では、ウニ卵はほとんど体積が変化しない。


したがって、この溶液は等張液である。



しかし、同じように海水と等浸透液である

塩化カルシウム(Ca(Cl)2)溶液中では、ウニ卵は吸水して体積を増す。


すなわち、低張液となる。



一般に動物細胞は内圧の変化に応じて容易に変形し、


細胞内外の圧差(膨圧)はきわめて低い値に保たれる。

したがって、細胞膜が理想的半透膜(溶媒のみを通し、溶質を完全に通さない)であると

仮定できる条件下では、細胞への水の出入りは細胞内外の浸透濃度が一致した点で平衡に達する。





実際に、ウニやゴカイの卵では、非水相(浸透的に不活性な細胞体積部分)とよばれる

補正値を減じた体積の価は、ある程度薄めた海水などの細胞外液の浸透濃度に

反比例して変化する。



 一方、植物細胞は細胞壁によって体積が制限され、膨圧は数気圧から数十気圧にまで達する。


浸透圧は、植物体の力学的強度を保ったり、成長運動や就眠運動の原動力を提供するなど、

植物においても重要な役割を果たしている


[村上 彰]






3,人体での浸透圧





人体内の体液の浸透圧は腎髄質(じんずいしつ)を除いて

すべて等しく、かつ一定に保たれている


このため、浸透圧が変化すると、細胞内外、

あるいは各体液間に水の移動がおこり、

細胞内部の水欠乏や水過剰を生じ、円滑な生体機能が失われてしまう。


したがって、


浸透圧は生体内部環境として


もっとも重要な条件の一つといえる





血液の浸透圧腎臓から排泄(はいせつ)される


水(H2O)およびナトリウム(Na)の量によって調節されている。



たとえば血漿(けっしょう)の浸透圧が上昇すると、

下垂体後葉からの抗利尿ホルモン分泌が増加して、

腎尿細管における水の再吸収が増すこととなる。



その結果、尿量が減少して血漿の濃縮を防ぐ一方、

渇きを感じて水分の摂取が増加する。

逆に血漿の浸透圧が低下した場合は、

抗利尿ホルモン分泌が抑制されて水分の排泄が増加する





 体液の浸透圧の大部分は


電解質によって生じるもので、


その圧力は285ミリ浸透圧モル(5500ミリメートル水銀柱)である。


一方、血液の中には電解質のほかに

タンパク質などの大型分子も含まれており、

このような大型分子による


浸透圧を膠質(こうしつ)浸透圧という




電解質は毛細血管壁を自由に透過するため、

それによる浸透圧は血管壁の内外でただちに平衡に達する。




ところが血漿の膠質浸透圧は約20ミリメートル水銀柱にすぎないが、


タンパク質は毛細血管壁を透過しないため、

間質液に対して血漿は高張となり、水を血管内に吸引する力となる。


このため、逆に栄養障害などによって低タンパク血漿になると、

膠質浸透圧が減少するため、

水分が血管から組織へ出て

浮腫(ふしゅ)いわゆるむくみをきたすこととなる



[真島英信]







0 件のコメント:

コメントを投稿