
1,ガロア理論とは
xを変数とするとき、2次方程式ax²+bx+c=0の解が
x=(-b±√(b²-4ac))/2aで与えられることはよく知られている。
n次方程式の解が、2次方程式のように、係数を用いて加減乗除と根号で書き表すことができる時、
つまり、このような解の公式を作ることができる時、代数的に解けるという。
3次方程式、4次方程式が代数的に解けることは16世紀から知られており、
解の公式はそれぞれカルダノ(G.Cardano)の公式、フェラーリ(L.Ferrari)の公式と呼ばれている。
19世紀初めにノルウェーの数学者アーベル(N.H.Abel)は、
5次以上の方程式が代数的には解けないことを証明した。
ほぼ同時期に、フランスの数学者ガロア(E.Galois)は群の概念を導入し、
解の公式が存在するための必要十分条件を群の性質としてとらえうることを発見した。
その後、この理論は体と群の関係として整理され、ガロア理論と呼ばれるようになった。
アーベルは自分の論文が認められる寸前に26歳で病死し、
ガロアはフランス7月革命の荒波にさらされ、20歳7カ月にして決闘の末、世を去った。
これら若き天才数学者たちの不遇の一生は、歴史上の数学ロマンとなっている。
(桂利行 東京大学大学院教授 / 2007年)
2,もっと詳しく…
体の性質を有限群に関連させて調べる理論。
n次の方程式は重根を重複して数えればn個の複素数解をもつ。
これはガウスによって証明された代数学の基本定理である。
二次、三次、四次の方程式は、とくに、係数とn乗根(n=2, 3, 4)を用いて解くことができる。
しかるに五次以上の方程式は、たとえばxn-a=0といった特殊なものを除けば、
係数とn乗根だけでは解くことができない。
これが有名なアーベルの定理である。
アーベルが19世紀初頭にこれを得たのに引き続いて、
ガロアは、根の間の置換のなす群を研究することによって、
べき根によって方程式が解けるかどうかを群の問題に転化する原理を確立した。
これがガロアの理論である。
一見、アーベルの定理によって代数学は研究すべき対象を失ったかに思えたが、
実際には古典代数学の幕引きが行われたのであり、
以後、群、体などの代数的構造を研究する新しい代数学が誕生した。
Qでもって有理数体を表す。f(x)を有理係数のn次既約多項式とする。
方程式f(x)=0の解のすべてをQに添加した体をKとする。
体Kの自己同形の全体Gは群をなし、その位数はnである。
このGをKのQ上のガロア群と称する。
Gの部分群とKの部分体とが一定の方法で1対1に対応するというのがガロアの基本定理である。
こうして、体の問題が群の問題に転化される。
とくにf(x)=0の解が係数とべき根を用いて表されるためには、
G(0)=G, G(n+1)=[G(n),G(n)]
(ここに[G(n),G(n)]はGの交換子群である)とするとき、
あるnに対してG(n)が単位元のみからなる群となることが必要十分条件である。
このような条件を満たす群を可解群という。
すなわち、ガロア群が可解群であることがべき根で解ける条件である。

[足立恒雄]
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