1,異方性とは
化学的な組成が一様な固体でも、原子レベルで調べてみると、
原子が規則的に並んでいる場合(結晶)と
規則性のない場合(非晶質、アモルファス)に分かれる。
結晶では原子配列の方向性によってその性質も異なる。
これを異方性という。
これに対して、非晶質の物質は特定の方向性はないので等方的である。
たとえば、結晶では特定の方向に力を加えると
割れやすい性質(劈開(へきかい)性)をもつものがある。
非晶質ではこのような割れやすい方向がないので、
一般に強靭(きょうじん)になり、
テニスのラケットや釣り竿(ざお)などに利用されている。
また、結晶が水晶のように特徴的な外形結晶表面をもつのもこの異方性による。
ガラスは非晶質であり、等方性の物質で、
光に対して複屈折を示さないが、結晶はつねに異方性である。
方解石の薄片を通して文字を見ると、複屈折のため二重に見える。
光学的性質だけに限れば、岩塩やダイヤモンドなど
立方晶系に属する結晶は等方性を示すが、
これらの結晶も
ほかの性質の測定では異方性を現す。
一般に結晶の異方性を総合的に観察してみると、
異方性には対称性があることがわかる。
たとえば、岩塩の性質はある結晶軸の回りに
90度回転すると同じ性質を示すが、水晶の場合は60(120)度ごとになる。
これらの結晶の特徴は対称面や対称中心、
あるいは特定の軸の周りの回転対称によって特徴づけられる。
このような対称性に基づいて分類すると、
結晶の異方性には32種類(32結晶点群)あることが導かれる。
ただし、結晶に限定しなければ異方性の種類は無限にある。
[石田興太郎]
『堂山昌男編『単結晶――製造と展望』(1990・内田老鶴圃)』
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