
.......あれ、いない。
いやそんなはずはない。
しかし何度見直しても、平木の死体はなかったし、。
一滴の血の痕跡も見当たらない。
移動したのか?
彼女は死んだのか?
それともこれは夢なのか?
いや僕の意識ははっきりあるし、 ほっぺをつねってもとても痛かった。
だとしたら、
「大丈夫。
私が飛び降りた後、
この言葉は遺言でなく、彼女の真意だったのか。
ダメだ。
ここから飛び降りるなんて出来るわけがない。
僕は急いで扉の方に向かい、さっきとは違い豪快に扉を開け、
怖い、怖すぎる。
しかし 4階の辺りで震えていた足が止まった。
......................................................................................
.........................くそっ。
僕は足を戻した。
逃げ出したかった場所から息を切らして向かった。
屋上に着いた僕は柵をよじ登り、
野球部、サッカー部、陸上部の連中が声を出して練習に励んでいる。
誰でもいい。
ここで誰か僕に気づいてくれたら、きっと飛び降りることなんてなかったろうに。
そしたら、明日から僕は自殺未遂の疑いで異質の存在として
取り扱われるんだろうなぁ。
風の音がうるさい。
しかし心臓の鼓動がそれを遥かに勝ってうるさい。
なぜここまでするのか?
美少女に頼まれたから?
それとも借りを返すため?
それともプライドのため?
それともくだらない毎日から抜け出すため?
分からない。
いや彼女はきっかけに過ぎない。
そして、 この世界からダイブした。
その瞬間、風を切る音が僕の鼓動をかき消した。

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