1,インディオとは

スペイン語、ポルトガル語でアメリカ大陸の先住民をさす名称。
英語ではインディアンIndianである。
インド人と区別するためアメリンディオAmerindio(スペイン語)、
アメリカ・インディアンAmerican Indiansという名称を用いる場合もある。
日本では、北アメリカ先住民をインディアン、
中央・南アメリカ先住民をインディオと区別して使う場合が多い。
これらの名称が生まれた原因は、コロンブスがアメリカ大陸に到達したとき、
そこをインディアス(当時は東アジア全体をさした)と誤解したことにある。
アメリカ大陸の先住民は、インディアスの住民=インディオとよばれることとなった。
征服当時のインディオの子孫であり、移住者と混血していないアメリカ大陸の住人を、
現在ではインディオとよぶのだが、一般的にはメスティソmestizo(スペイン語)、
中央アメリカではラディノladino(スペイン語)、
南アメリカのアンデス地方ではチョロcholo(スペイン語)
またはミスティmistiとよばれる混血と、インディオとの区別は、
生物学的に混血しているかという人種区分とはかならずしも一致しない。
たとえば中央アンデスでは、実際には混血していなくてもインディオ固有の生活様式を捨ててしまい、
従来の居住地から移動した者はもはやインディオではなく、
チョロやミスティとよばれるようになる。
実際の混血の有無よりも、外来の文化に同化しているか否かという点のほうが、
インディオとチョロ、ミスティを分ける決定的基準としてより重要である。
インディオという用語にはしばしば価値判断が含まれている。
アマゾンの先住民に対してときどき使われ、
野蛮人を意味するバルバロbarbaro(スペイン語)や
サルバヘsalvaje(スペイン語)よりはよいかもしれないが、
インディオにもしばしば侮蔑的な響きが付きまとう。
文化の遅れている者という意味合いが込められているのであり、
相手に面と向かってインディオとよぶことは非常な侮辱となる場合がある。
このような価値判断を避けるために、都市に住んでないという意味でカンペシーノcampesino(スペイン語)、
旧来の住人という意味でインディヘナind

またはナティーボnativo(スペイン語)とよぶことが多くなった。
メキシコのようにインディオの民族意識の高まっている所では、
インディオである誇りを前面に出す場合もあるが、
自らがインディオであることを隠そうとする場合もあり、
インディオと国家社会の関係は大きな問題であり続けている。

[木村秀雄]
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