1,マルクス主義とは

マルクスとその協力者エンゲルスの思想にもとづいた理論や実践活動を意味する。
近代の思想は自由で民主的な社会を求めてきた。
しかし、産業革命以降に現れたのは、極度の貧富の格差と植民地争奪戦という過酷な現実だった。
マルクスとエンゲルスは、この問題の原因を、資本の自立的な運動に見た。
資本は絶えず拡大しようとし、その運動が社会を作り上げていく。
これは人間の意志を離れた勝手な運動であり、人々を本来の労働のあり方から疎外する。
マルクスとエンゲルスは、
資本の自立的な運動が促進される背景には私的所有と市場経済があり、
これらを廃止して経済を自らのコントロールのもとに置くことで、
人々が互いに協力し合う自由で対等な社会が実現する、という大きな社会変革の見取り図を描いた。
この思想は人々に大きな希望を与え、
19世紀後半から20世紀を通じて資本主義批判と社会変革の可能性を担ってきた。
しかし、戦後旧ソ連でのスターリニズムの問題が明らかになると、
マルクス主義は厳しい批判にさらされることになる。
だが、こうした批判の一方で、フランスのアルチュセールらによる
マルクスの読み直しも行われた。
マルクスは、社会意識や法や国家の制度(上部構造)は
経済構造(下部構造)に規定されると考えた。
それに対し、アルチュセールは「国家のイデオロギー装置」という概念で、
イデオロギー(上部構造)は、経済構造に従属する虚偽の意識や観念ではなく、
学校や家族や政治制度のなかで絶えず再生産され、見えにくい形で人間を調教する装置となっていると主張した。

(石川伸晃 京都精華大学講師 / 2007年)
コメント
コメントを投稿