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「ただいま。」
僕は家路につき終えた後、
不用心にも鍵がかからずに閉まったドアを開き、玄関で座り込んだ。
「おかえり。今日は少し遅かったわね。」
「ああ。ちょっと学校でやることがあってさ。」
「学校で何か良いことでもあったの?」
さっきまで自己嫌悪に襲われていた人間が
まさかそんなことを言われるとは思わなかった。
「何で?」
「いつもより声が軽いから。」
そうか。僕はこの状況に歓喜していたのか。
「あぁ、そうだね。」
疲れた。喉が痛い。 あんなに人に向かって叫んだのは生まれて初めてだったんだ。
僕は自分の部屋に入ると、とても落ち着いたことにほっとした。
不覚にも平木が作り出した悩み部屋と比べてしまったのだ。
僕は制服から着替えることもなく、ベッドに倒れ込んだ。
頭に雲がかかったようなそんな感覚になった。
すっきりしない。自然と目をつむると、昔の記憶がまぶたの裏によみがえる。
昔、ヒーロー特撮を見ていた。
ヒーローが怪人を倒す。
人々は歓喜し、悪を残して誰もが笑顔で帰っていく。
人々は歓喜し、悪を残して誰もが笑顔で帰っていく。
しかし、町は壊れ、人は死んでいた。
僕はその後始末はどうするのだ、と気になった。
しかし、僕は言わなかった。
いや、言えなかった。
しかし、聞かなかった。
いや、聞けなかった。
いや、聞けなかった。
瞼がやけに重く、光を遮った。
あぁ、多分このまま朝まで寝てしまう。
分かっていても、
目を閉じることを止められなかったし、止める気もなかった。
目を閉じることを止められなかったし、止める気もなかった。

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