1,成熟社会とは

イギリスのガボールの著した『成熟社会』(1972)からの転用語で、
一種の未来社会についてのビジョン。
ガボールは1971年にノーベル物理学賞を受賞した高名な物理学者で、
かたわら未来学者としても活躍した。
彼のいう成熟社会とは、これまでの物質万能主義を排し、
ひたすら量的拡大のみを追い求める経済成長や
それに支えられた大量消費社会のかわりに、高水準の物質文明と共存しつつも、
精神的な豊かさや生活の質の向上を最優先させるような、平和で自由な社会を意味している。
そこでガボールが提示している未来社会像は、
かならずしも新奇なものではなく、高成長から低成長への
転換期にあたり、自然との闘いから人間性との闘いへ、
物質的・手段的価値から精神的・表出的価値への推移(=成熟)を可能にし
促進するような政治、経済、社会、文化全般の見直しを提唱したものである。
たとえば、消費社会の不毛と倦怠の克服、知能偏重から
知能と倫理の調和へ、善意と幸福を周囲に広げる人間の形成、
強制と支配ではなく自由と責任と連帯の拡充、多様な個性と
価値観を尊重し許容する寛容な民主的社会の実現などが主張されている。
この立場は、生活の質の向上による社会の漸進的活性化を意図するもので、
人間にとって真の豊かさとは何かを追求する
ポスト・マテリアリズムの立場にほかならないが、
一方、伝統的な自由主義・民主主義の流れに棹(さお)さしながら、
一種のエリート主義的な色調をも帯びている。
[濱嶋 朗]
『D・ガボール著、林雄二郎訳『成熟社会 新しい文明の選択』
(1973・講談社)
▽林雄二郎著『成熟社会日本の選択』(1983・中央経済社)
▽野村総合研究所編・刊『日本型成熟社会』(1981)』
そこでガボールが提示している未来社会像は、
かならずしも新奇なものではなく、高成長から低成長への
転換期にあたり、自然との闘いから人間性との闘いへ、
物質的・手段的価値から精神的・表出的価値への推移(=成熟)を可能にし
促進するような政治、経済、社会、文化全般の見直しを提唱したものである。
たとえば、消費社会の不毛と倦怠の克服、知能偏重から
知能と倫理の調和へ、善意と幸福を周囲に広げる人間の形成、
強制と支配ではなく自由と責任と連帯の拡充、多様な個性と
価値観を尊重し許容する寛容な民主的社会の実現などが主張されている。
この立場は、生活の質の向上による社会の漸進的活性化を意図するもので、
人間にとって真の豊かさとは何かを追求する
ポスト・マテリアリズムの立場にほかならないが、
一方、伝統的な自由主義・民主主義の流れに棹(さお)さしながら、
一種のエリート主義的な色調をも帯びている。
[濱嶋 朗]
『D・ガボール著、林雄二郎訳『成熟社会 新しい文明の選択』
(1973・講談社)
▽林雄二郎著『成熟社会日本の選択』(1983・中央経済社)
▽野村総合研究所編・刊『日本型成熟社会』(1981)』
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