その11←ここをクリック
そう思うと、緊張してきた。
女の子と付き合ったこともなければ、手を繋いだことさえない。
青春とは無縁だった僕にとってはこれは喜ばしいことなのではないか、
それなのになぜか他人ごとのように感じてしまう。
しかし、初めての経験だからこそ分からない。
これから何をするのか、一体何があるのか、
僕の頭ではとうてい予測さえできない。
向こうの出方を待っていると、
平木は机の本棚にある教科書やノートを取り出して、勉強を始めた。
客人である僕に目もくれず、もくもくと数学の問題を解いているので、
まるで親にかまってもらえない子どものように、
むずむずとした寂しさを隠せずにいた。
彼女の言うこと、為すこと、
全てが僕の予想の蚊帳の外で暴れまわっているようだ。
こちらから何か言うのは、すこし癪だったが、
しびれを切らし、向こうの意図を聞いてみた。
「で、これから何をするの?」
「羽塚くんには呆れるわ。
私のこの姿を見ても、何をしているのか分からないなんて」
「いや、それは分かるけどさ…何で今、勉強するんだ?」
「あら、友だちもいない羽塚くんには誰も中間テストの日程を
教えてくれなかったのね、かわいそうに。
これに懲りたら、ちゃんとホームルームの時には窓の外を見てないで、
秋山先生の話をきちんと聞くことね。」
…こいつ、女の子じゃなかったら一発ぐらい殴っているかもしれない。
しかも人が一番気にしていることを…
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