その9←ここをクリック
帰り道、僕はあの質問について悔んでいた。
久しぶりに会った一発目にあんなドストレートな質問をして、
いい返事が返ってくるわけがない。
でも、心のどこかでいけるんじゃないかと思ってしまった。
僕は仮にも平木を助けたことがあると思っているからだ。
あの日以来、僕はうぬぼれている。
自分には何か特別な力があり、
この午後三時のコーヒーブレイクような時間を変えることが出来る。
いや、そう望んでいるのだ。
焦るようなことはないが、確実に何かが足りない、そんな感じだ。
そういえば、平木は今日僕に何も言わずに帰っていった。
僕から話しかけないと、彼女が話すことなんてほとんどないが、
何のリアクションもなく、帰ったのは意外だった。
平木が僕に体育テストがあることなんて知っているとは思えない。
わけを知りたかった。
しかし、平木の行動に指摘することはあまり気がすすまなかった。
今、僕は彼女の気まぐれによって、一緒に勉強したり、下校できている。
僕は今まで平木に一緒にいたい、なんて言ったことがない。
それなのに、なぜ昨日は黙って帰ったのか?なんて聞こうものなら、
彼女に僕が一緒に帰ることはさも当然のことであると認識していると、
思われてしまう。
それだけは絶対に避けたい。
力んだ瞬間、腹の虫が鳴ったことに気づいた。
今日は午前で終わりと思っていた矢先、体育テストがあったので
弁当を持ってこずに昼食は抜きになってしまっていた。
おそらく、今の僕の胃には何も入っていないんだろうな。
見上げると、気持ちのいいほどの快晴だった。
空は雲ひとつないというのに、腹の虫も鳴らずに揚々と僕を照らしている。
それがまた僕によりいっそうため息を深くつかせた。
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