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『落ち込み少女』第6章その5







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ずいぶん可愛らしいふわっと声が教室の隅にいる僕にも聞こえてきた。

その声でみんなの注意が教卓にいる女子学級委員に移った。

初登場ってわけじゃない。 


彼女の名前は西山皐月だ。


僕が所属する一年三組の学級委員であり、

モデル雑誌に載っている女の子とそん色ないほどの整った顔に肩までかかった

くせっけのある髪と左目の涙ほくろが特徴の清楚系美少女だ。


それだけでも恵まれすぎと言えるだろうに

成績は優秀でスポーツ万能、そのくせ平木とは違って人当たりがよく

彼女を非難する人は僕のうすっぺらな情報網が探知する限りでは全く耳にしない。

要約すると西山皐月は非の打ちどころのない完璧美少女なのだ。

いや、彼女の場合は完璧じゃないからこそ完璧なのかもしれない

彼女はホームルームで提出物があることをよく忘れたり、

入学当初、三階のこの教室から二階にある職員室に

たどり着けなかったという方向音痴なところもある。

俗にいう天然ってやつだ。

しかし欠点ともいえるそれが彼女の人気をさらにまくしたてている。


西山は何かを思いついたかのようそっと両手を合わせて、


 「じゃあ立候補がないことって私がやるってことでいいかな?」

この瞬間、クラスの女子はやられたと思ったはずだ。

誰かが手を挙げるまで帰れないこの状況が十分ほど経った、

みんなが最も他力本願になる瞬間に自ら立候補したのだ。

もしかしたら狙ったのかもしれない。

これで彼女の株はさらに上がったのだ。

みんな一も二もなく話を進めていった。

クラスメイトから賞賛された西山は照れたように、


「でも私足遅いかもしれないけど、いいかな?」

といった。

さっきの発言を聞いて反対できる奴がいるものなら、

そいつにクラス全員を敵に回す覚悟を持っているのかと僕は聞きたい。


「ついでに新田くんも出てくれるよね?」


新田は急な提案に慌てたようだったが、

みんなの前で西山に両手を合わせてお願いされたらもう断れない。

新田も学級委員で、成績優秀、吹奏楽部のプリンスの異名をもつほどのイケメンだが

体育が大の苦手らしく、先月開かれた体育テストの五十メートル走でも

十秒かけて女走りになりながら駆け抜けて、

クラスの笑い者になった残念な奴なのだ。

おそらく彼はこの体育祭で全校生徒に女走りを見られると思うと、

普段は女子にちやほやされていけ好かないが、なんだか可哀そうに思えてきた。



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