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土壌







1,土壌とは


地表の岩石や地を広くおおっている未固結の自然物質を表土という。

表土は本来新鮮であった岩石や地層が風化してできた産物で,

通常は岩石や地層が風雨や日光にさらされ,気温変化を受けて,

次第に風化し,分解して砕屑 (さいせつ) 物になったものである。

そして,地表であるためにそこに多くの生物が発生し,その遺体や腐植の集積と変化,

その一部が分解してできた炭素化合物と,岩石・地層が分解してできた鉱物

二次的に生成された鉱物が混ざり,さらに水の溶解作用などが加わり,

長い間にはある厚さの部分が層状にいくつかに区分されるようになる。

これが土壌である。


土壌は典型的には表層から順にA,B,C,Dの4層に分けられ,


D層は下位の新鮮な岩石・地層そのもので,A,B,Cの各層はそれから由来したものである。

それらの垂直断面を土壌断面といい,各層は色調,化学組成,

粒子の配列,粒子の大きさがそれぞれ異なっている。






 
 A層有機物が多く,最も激しく風化と溶脱を受けている。


B層は中程度の風化を受け,A層の風化物が多量に集積する。

湿潤な温帯気候のもとではA,B両層ともケイ酸鉄や

アルミニウムの水和物 (粘土鉱物) を形成しやすいが,

B層はA層から浸透してくる水によって運ばれた粘土鉱物に富んでいる。

C層はA・B両層をつくった母材の層で風化した岩石部分である。


土壌断面にはいつでも各層がみられるとは限らない。

A層が浸食によって失われる場合,高所からの表土の移動で乱される場合,

まだ十分土壌が発達せず区分しにくい場合もある。

土壌の厚さは場所によって異なり,

一般に高温湿潤な熱帯では深くて厚さ数mにもなるが,

寒帯では十数 cmにしかならないところもある。

地球上では気候と自然植生の違いに応じて土壌帯が形成され,

北半球の大陸では高緯度から順に,永久凍土上に夏生育した

コケ類の遺体を母材とする泥炭状のツンドラ土,

湿潤寒冷気候の針葉樹林下にはケイ酸に富む灰白色のポドゾル性土壌,

湿潤温帯の落葉広葉樹林下に広く分布しA層は暗色であるが

B層が酸化鉄で着色された褐色森林土,西南日本の丘陵,

台地上に分布する酸性の赤黄色土,

日本など火山の多いところに分布する腐植の多い黒色の火山灰性黒ボク土,

大陸内部の乾燥地では腐植に乏しく塩類が地表に集積した灰色の砂漠土,

湿潤な熱帯では風化と溶脱を強く受けた赤色のラテライト性土壌などが分布する。

このように土壌には種々な色調 (土色) がみられるが,それは分解した有機物,

鉄化合物,石英・カオリン・雲母など土壌鉱物の3要素に支配される。

有機物の腐植は暗褐色または黒色の砕屑をなして土壌鉱物に付着し,

排水が悪く通気性が不十分であると鉄分の還元と

嫌気性微生物の腐敗によって灰色になりやすい。

有機物が少いと赤鉄鉱や褐鉄鉱のため赤や黄色になる。

土色は土壌の生成とそれに働いた作用が表われているので,

農業生産の指標としても重要である。







土壌に含まれる化学成分は鉱物質と有機質に大別される。

鉱物は母材が風化して細かくなったが,あまり変質していない一次鉱物,

すなわち石英と長石,雲母,角閃石,輝石などのケイ酸塩鉱物が多くを占める。

それと,岩石や上記ケイ酸塩鉱物が風化によって生じた二次鉱物,

すなわちケイ酸アルミニウムとケイ酸鉄の複合体である粘土鉱物である。

花崗岩のような酸性火成岩に由来する土壌は比較的ケイ酸分が多く,

玄武岩のような塩基性火山岩に由来するものは酸化アルミニウムや鉄分に富む。

有機物は植物,動物,微生物の組織とそれらの分解物で,土壌には種々の程度に含まれる。


地球全体からみれば,土壌は薄い地殻のそのうちの表面を占めるにすぎないが,

人類にとっては生活していくために必要な食糧,衣料,住居の材料を供給する場でもある。




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