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分離-個体化理論





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1,分離-個体化理論とは


ハンガリーの精神科医マーガレット・マーラーが母子の

実験室観察に基づいて提示した発達理論。

乳児が母親との一体感から徐々に分離していく過程を4つに分けた理論。


未分化期
1.正常な自閉期(1〜2ヶ月):この時期の新生児は、

内部と外部、自己と他者の区別がない。

まだ極めて未成熟な新生児は、外部の刺激や苦痛から自分を守る為に

『正常な自閉期』を持ち、外部刺激に対して明瞭な反応を示さないことが多い。


2.正常な共生期(3〜4ヶ月):分離・個体化期を迎えるまで赤ちゃんにとって

母親と自分は一心同体の存在であって、自己と母親の境界線は存在せず

自他未分離の感覚に覆われている。

ex.赤ちゃんが泣くと、母親はおっぱいをくれる。→お腹を満たすには、泣けばいい。

お母さんがおっぱいをあげたい時と赤ちゃんがお腹を空いた時は一致する。

だから、共生という。






分離・固体化期
3.分化期(5〜8ヶ月):自己と母親が異なる存在であると認識し始めると同時に、

自分の母親と他の母親を見比べるような態度を取り始める。

ex.赤ちゃんと母親の一体感がなくなっていく。



4.練習期(9〜14ヶ月):外界に対する好奇心や興味が強くなり、

外界の探索行動が多く見られるようになってくるが、

母親と離れている不安や寂しさが強くなると再び母親に戻って

『情緒的エネルギーの補給』を行ってもらう。

正に母親は子どもにとっての精神的な『安全基地』の役割を果たす事になる。

ex.お母さんとの物理的距離が離れていく。ハイハイができる。

母親が赤ちゃんを追いかけると、ふざけて逃げたりする。

運動性の発達→万能感が生まれる。→だから、母親から離れていく。


5.再接近期(15〜24ヶ月):母親から分離しようとする意識が高まるのだが、

完全に分離しようとすると分離不安が強まってしまうという

矛盾した感情を内在する時期である。

そのため、いったん分離しかかっているのに、また安全基地である母親に

舞い戻ってくるという再接近の行動が頻繁に見られる。

before:よく出来ましたね〜。now:持ち方が違う。

→父親から距離を取られる。再び母に接近する。共生期の頃の母を求める。

しかし、母は以前とは違う。→しつけのため。→子どもはイライラする。

これを再接近危機という。

母は適度の心身の世話によって、快適な環境と、対象としての恒常性を与える

’Good enough mother(ほど良い母親)’にならなければならない。

「甘えさせ過ぎず、放置はしない」→幼児は親の気持ちを理解する。

共感性が生まれる

自分に責任があると気づく。私の悪いところは母が悪いところを見せたせいだ!

→これを分裂という。

「お母さんは、良いところも悪いもところもあり、

これは私を愛しているからだ!あの時言い過ぎたかなぁ?」→罪悪感が生まれる。

そこには思いやり=共感性がある。→自分の悪いところを認める。



6.個体化期(24〜36ヶ月):母親からの分離が成立し、母親と一定時間、

離れていても大丈夫な個体化の能力を確立する時期。

ex.安定して母がいなくても耐えられるようになる。



情緒的対象恒常性の確立期(36ヶ月以降):

心の世界に自分や母親・父親、他人のイメージを思い浮かべられるようになり、

そのイメージはある程度の恒常性と持続性を持っている。

ex.分離不安に対する耐性が高まり、意欲的な行動が多く見られるようになる。

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