その10←ここをクリック
店を去った後、僕らは近くの公園に向かっていた。
この公園は駅に近いということもあってか、
子どもだけなく、さまざまな年齢層がいる。
正直、六月の快晴ということもあってか、建物の中の方がよかったが、
今から引き返そうと提案するのも格好悪い。
「ありがとう」
西山はうつむきながら、お礼を言った。
白いきれいな肌が日ざしにさらされている。
「ああ、別にいいよ。とりあえず、座ろうか」
着いた僕らは、子ども一人分の間隔を空けて、ベンチに座った。
西山はすぐそこにある自動販売機でお茶を買ってきた。
「はい」
僕の分まで買ってきてくれたようだ。
「あ、ありがとう。返すよ」
「いいよ。みっともないこと見せちゃったし」
何とか普通にいようとするが、どうしても表情が硬くなってしまう。
まるで顔一面に強力粉をつけたようだ。
「にしても、あんな奴らが県内一の進学校に通っているなんてなぁ」
腫れ物に触れるようにそわそわするが、黙ったままでいるのももぞもぞする。
木の隙間なく生い茂った落ち葉から
金粉のように細かく日の光だけをこぼれさせた。
横から西山は陽気に遊んでいる子どもたちとは
まったく異なる雰囲気を醸し出していた。
「誰にだって、弱みはあるさ」
励ましなのか一人言なのかわからないほどの声で言った。
そして、言った後で的外れなことに気づいた。
その証拠に西山はうんともすんとも言わないし、
この周辺の空気にも見放されたようだった。
「いつも言っていたんだ、皐月は気にしすぎだって」
ほおけたようにキョトンと半開きにしていた口から聞こえてきた。
まるで一人言のようだが、無視できなかった。
「でも、由里に何がわかるのさぁ、私しか友だちのいない由里に」
「西山?」
それまでまるで違う世界にいた西山は僕の問いに目が覚めたように
「ごめん」
と言い、乾いた笑顔も可愛く見えた。
何言うべきか、迷っていた矢先、
「今日は帰ろうっか」
西山は立ち上がり、駅の方面を向いていた。
「そうだね」
そう言わざるを得なかった。
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