「なにこれ」
僕らは驚愕した。
ここで僕だけでなく、西山も含めたのは、
表情から察しただけでなく、そうあって欲しかったからだ。
今、見ているこの情景に疑いと不安を覚えたのだ。
扉を開けると、大勢の人がいたからだ。
僕は確認していた。
電車に乗り込む時には僕ら以外の乗客など見る影もなく、
この電車は僕らがいた駅が始発だった。
しかし、僕の網膜という名のスクリーンには、
軽く50人はいるんじゃないかと思うほどの人だかりが映し出されている。
まるで平日の通勤ラッシュの時のようだ。
西山も今の状況が異様な様であることはわかった。
「とりあえず、運転席まで行ってみよう」
呆然としているのか、ただ首を縦に振るだけだった。
本来ならばいるはずのない人混みの中をかき分けていった。
通り過ぎていく顔を見ると、本当に生きている人間のようだ。
きっとこれも、西山が作り出したものなのだろうか。
だとしたら、これはすごい規模だ。
平木は一部屋だったなのに、西山は電車なのだから。
ならば、西山は平木よりも悩んでいるということなのか。
いや、憶測できるものではないはずだ。
僕は悩み部屋については何も知らないんだ。
行く先も分からない切符を無理やり握らされた、
哀れな男子高校生といったところか。
その切符は手放すには惜しく、乗ってみるにはあまりに怖かった。
汗で切符がぐちゃぐちゃになりそうだ。
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