その11←ここをクリック
家に帰ると、母と妹がテレビを見ていた。
「どうだった、デートは?」
ニヤニヤしながら、僕をうかがっている。
それは中世の貴族が付けているような仮面に見えた。
なぜ母と妹が楽しそうにしているのか、僕には理解できなかった。
だってそうじゃないか。
僕が女の子と仲良くなろうがならまいが、関係のないことじゃないか。
何で他人のニュースに興味を持てるんだ?
まぁ、そこを百歩譲ったとして、あざけり笑うような態度はいただけない気がする。
別に怒るほどのことじゃないが、煮えたぎる思いがこみあげてくる。
「不思議な夢を見た気分だったよ」
そう言い残し、今日の彼女のように颯爽と二階へ上がった。
机を見ると、教科書、問題集が積み上げられていた。
あぁ、そういえば、課題がたくさん残っていたのを忘れていたのだ。
ノートをめくってみると、当然課題は終わってはいなかった。
ったく、なんで僕一人には特別なことが起きないんだ?
あれくらいのことがあったんだから、学校の課題くらい終わらせてくれてもいいだろ、
もしくは学校を破壊してくれるくらいのことをしてもいいだろ。
何で僕の周りは異常であるのに、僕は正常に回っているんだ。
悔しい、でも今を変える力も考えも持っていない。
良いことをしても、やるべきことはちゃんと僕を待っている。
時計のカチッ、カチッ、という音が机に座るように促している、
もう九時になりかけていることに虚しく感じると同時にそう感じた。
一日が一瞬にして終わるのは、何とも言えない寂しさが心の底からこみあげてくる。
今日は疲れたな、課題は明日やることにしよう。
それからくだらない動機で沸き上がった感情の高ぶりをしずめるために、
僕は部屋の照明を消すことにした。
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