その10←ここをクリック
「それって、ホームルーム終わってすぐ?」
「あ、うん。今日の放課後でも大丈夫だよ」
つまり、今日の放課後、体育祭の準備をサボれるということか。
「わかった。いいよ」
「ほんと、ありがとう」
西山は手を合わせて、嬉しそうだった。
「じゃあ、ホームルーム終わったら、よろしくね」
「ああ、わかった。それより、会議はもう無いのか?」
「うん、一応昨日で終わって、
後は書類を先生に提出するだけだから、大丈夫だよ」
「わかった」
「それじゃ、ありがとうね」
西山は小走りでさっきまで話していた一軍連中のもとに戻った。
肩まで垂れた彼女の髪の毛は、後ろからでも美少女であることを明記している。
予定よりも時間をかけて消した黒板は、チョークの粉がこべりついていた。
自分の席に戻ると、平木が本を読んでいるのが目に入った。
「西山さんと仲が良いのね」
こちらを見ることもなく、ただページをめくり、そう言った。
「いや、たまたまだよ」
「そういえば、西山と平木は同じ中学だったんだよな」
「ええ、そうね」
「何で言わなかったの?」
平木はそれまで読んでいた難しそうな本を閉じて、
「中学時代の記憶は思い出して微笑ましいものではないから」
そう言って、椅子を下げながら立ち上がり、教室から出ていった。
怒らせてしまったのかな?
平木は西山のことを好いていないのか?
西山の話を聞く限りでは、友だちってわけじゃなさそうだし、
仲たがいしたってことはないだろう。
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