その15←ここをクリック
情報収拾は大事だ。
おそらく、平木は僕より詳しく知っているはずだ。
でも…
「平木さんに聞いてみる?」
「それが一番の近道だと思う、でもさ…」
「でも?」
「悩み部屋は、その人の悩みを具現化したものと思うんだ。
悩みを解決していないとすれば、
また嫌な思い出を呼び起こすことになるんじゃないかなってさ」
平木は母親との関係は良好になったというが、
それは僕に気をつかっていたのかもしれない。
つい最近知り合った僕を巻き込んで、
悩みは未だに解決していないと言えるわけがない。
その時、初めて気づいた、彼女は誰よりも僕に優しかったんだ。
拳を強く握りしめて、爪が皮膚に食い込んでいる。
「そうだね」
西山はすべてを悟ったような優しい笑顔を向けて、ドアの方に向かっていった。
「羽塚くんは二人の女の子を助けたことになるんだね~」
「いや、そんなこと…」
「そんなことある!」
「変わるきっかけを作ってくれたのは、君なんだから。
電車もレールのポイントを切り変える瞬間が一番大変なんだよ」
「もしも、羽塚くんが悩み部屋に行っちゃたら、私が一番早く駆けつけるよ!」
西山は可愛い笑顔のまま、屋上を去っていた。
「ありがとう、西山」
振り向いて見た空は、いつもより青く、透き通っていた。
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