その11←ここをクリック
二週間ぶりに教室に着くと、西山の座席に西山がいた。
「あっ、久しぶり~羽塚くん」
西山も僕と同様、制服を着ている。
「ああ、それにしても暑いな」
「その前に言うことがあるんじゃない?」
腰に両手を当て、むーっと不機嫌そうな顔で俺を睨みつけている。
しかし、そんな顔も可愛く見えてしまう。
「あ~、ごめん。ちょっと寝坊して」
「まぁ、私が呼び出したわけだし、今日は特別ね」
僕は自分の座席に向かい、座った。
窓の外を見ると、陸上部がグランドで走っていた。
きっと小嶋もそこにいるのだろう。
「それにしても何で学校なんだ?
話すなら喫茶店とか他に場所があるだろ」
「だって羽塚くん、この前ショッピングモール行った時、
全然楽しそうじゃなかったもん」
そうなのか。僕なりに楽しんでいたつもりけど。
きっと緊張していたから、顔が強張っていたのだろう。
「それに私はここが好きなんだよ。ここは何も背負わなくていい」
「学校は楽しいか?」
「うん、楽しいよ。みんな良い人だし、昔よりは肩の力が抜けた気がする」
確か名門の中高一貫の中学に通っていたんだっけな」
「でも親はこの学校に入ったこと、反対してるんだ」
「何で?」
「私の通っていた中学は私立の偏差値がそこそこ良いところだったから、
親は公立に入るのを許せなかったらしいよ。
何のために高い学費払って名門に通わせたと思ってるんだ!って」
まあそれは親のエゴを子どもに押し付ける、よくあることだろう。
間違っているわけじゃない。
将来苦労しないように、その建前がある限り、誰も反論はできない。
ただ、恐ろしい。
剥き出しの感情や欲望を押し付けるのは、無自覚に他人を傷つけ得る。
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