「羽塚くんは私のこと好きなの?」
大胆にもほどがある、休み時間に答えられる質問じゃない。
うるさいんだ、クラスメイトの喧騒が。
もう昼休みも終わろうとしているのに。
君が好きかって?
そりゃ、好きさ。
でも今のこの感情を言ってしまっていいものか、わからないんだ。
もっとふさわしい時、ふさわしい場所があるんじゃないか、そう思うと、
言葉が何も思いつかない。
「...普通かな」
ごまかした、最悪のごまかし方だ。
その顔は残念そうなのか、呆れたのか、とにかく僕にはもう期待していない雰囲気を醸し出していた。
これ以上言葉を発せば、いったい何を失うかわからなかった。
だから、黙ることにした。
五、六限の英語と化学はそれまでは違い、誰とも話すことなく黒板とノートとにらめっこした。
傍目から見たら、真面目な生徒に見えるだろう。
しかし今後の僕の人生で黒板とプリントでしか見ることはないだろう、
英単語と化学式は全くと言っていいほど頭に入ってこない。
ホームルームが始まっても、喪失感で考えがまとまることはなく、開いたノートと筆箱を片づけることを忘れてしまった。
担任の秋山先生はいつものように連絡事項について話していたが、そこに付けくわえ、十月に開かれる文化祭にも触れてきた。
途中から西山と新田も教壇に立って話を進めている。
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