故郷や応援したい自治体へ寄付をした個人や法人の納税額を軽減する制度。
公益にかなう寄付をした納税者の税額を減らす寄付税制の一種である。
都市と地方の税収格差の是正が目的で、欧米に比べて遅れぎみの寄付文化を醸成する役割も期待されている。
2004年(平成16)に長野県泰阜(やすおか)村が導入した寄付条例(泰阜村ふるさと思いやり基金条例)が前身で、
改正地方税法が施行された2008年度から個人向け制度が始まった。
自分のふるさとを応援するという趣旨からふるさと納税とよばれるが、全国どの自治体へも寄付できる。
個人は寄付額から2000円を差し引いた額について、年収などに応じて限度額まで個人住民税や所得税から控除される。
寄付先の自治体が5つまでなら確定申告は不要である。
個人は寄付額の30%以下の地場産品を返礼品として受け取ることができ、税の使い道を指定することも可能である。
2016年から企業版ふるさと納税制度(地方創生応援税制)が始まり、
企業は自治体の進める地方創生事業(内閣府が認定)に寄付すると全額損金算入され、
寄付額の最大6割分(2020年から5年間は最大9割分)の法人税や法人住民税が軽減される。
返礼品や控除制度が人気をよび、導入当初のふるさと納税額は年81億円であったが、
ピークの2018年度(平成30)に5127億円に増え、寄付件数は2300万件を超えた。
自治体の特典競争が過熱したほか、地場産品と関係ない換金性の高い返礼品が横行し、納税
額の多くが返礼品購入に消え、地方財政に寄与しない例も出てきた。
都市部中心に住民税控除額は2018年度に2447億円に達し、ふるさと納税が受益者負担原則に反すると批判された。
このため政府は2019年(平成31)3月に地方税法を改正し、2019年(令和1)6月から返礼品を「寄付額の30%以下の地場産品」に規制し、
従わない泉佐野市(大阪)、高野町(和歌山)、小山町(静岡)、みやき町(佐賀)の4市町を制度から除外した。
これに対し泉佐野市が2019年、除外取消訴訟を起こしたが、大阪高等裁判所は2020年、請求を棄却、
しかし同年最高裁判所は大阪高裁判決を棄却し泉佐野市の逆転勝訴となった。
[矢野 武 2020年8月20日]
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