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ケプラーの法則


ヨハネス・ケプラー(Johannes Kepler、1571年12月27日1630年11月15日)






ドイツの天文学者ケプラーが発見した惑星の運動に関する3つの法則。

ケプラーは師匠のティコ・ブラーエの観測結果などを吟味、取捨、評価して整理し、

より確かな資料を求めて、16091618年に発表した。


[大脇直明]





1の法則


「惑星の軌道は太陽を焦点の一つとする楕円である」――


この法則の核心は太陽が楕円の中心になく、焦点にあることである。

このことは、太陽と惑星との間の力が引力で、かつ中心力であって、

両天体の距離の2乗に反比例することに起因する。


[大脇直明]




2の法則










「惑星と恒星とを結ぶ線分が等しい時間に掃く(横切る)面積は等しい」


面積速度一定の法則)――

S = 12×r×vsinθ




【三角形の面積(S)=1/2×底辺(r)×高さ(vsinθ)】






このことは、両天体に働く力には惑星の軌道に沿って働く力はなく、


両天体を結ぶ線分に沿ってのみ働くこと(このような力を中心力という)を示し、


中心力では角運動量保存の法則成り立つことをいっている。 


[大脇直明]





第3の法則







「惑星軌道の長半径a(両天体間の平均距離でもある)の3乗は


公転周期(T)2乗に比例する」――



これも前述の引力と距離との関係を示している。



T2 = ka3  または  T2a3 = k



k:一定数】


これらの3法則が成り立つときの両天体間の力はニュートンの万有引力であり、


またそのときのみに成り立つことが理論的に証明される。



このケプラーの法則はのちにニュートンらによる


万有引力則や力学確立の基礎となったもので、歴史的にも重要な意義をもつ。



第1法則はその後の力学により、

「万有引力の下での軌道は太陽を焦点とする円錐曲線となる」と 


述べられるようになった。


なお、当然のことであるが、この法則は他の天体系(たとえば連星系)でも成り立つ。

とくに第3法則の比例定数は両天体の質量和に比例するので、連星の質量を求めるのに応用される。


[大脇直明]



『安楽岡雄三著『黄金数学 第3巻 宇宙科学と人間科学』(1989・創栄出版) 

GWF・ヘーゲル著、村上恭一訳『惑星軌道論』(1991・法政大学出版局) 

▽高橋憲明・広岡正彦著

『力学――質点力学を中心にして』(1996・培風館) 


▽井田屋文夫著『物理学を味わう――

コペルニクスの宇宙からマクスウェルの空間へ』1997・大河出版) 

▽木下宙著『天体と軌道の力学』1998・東京大学出版会) 

▽山本義隆著『磁力と重力の発見3 近代の始まり』(2003・みすず書房)』



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