
1,パノプティコンとは
イギリスの功利主義哲学者、法学者であるジェレミー・ベンサムが考案した刑務所の囚人監視施設の方式。
一望監視施設と訳される。
panopticonはギリシア語のpan(全)とoptikos(視覚の)の合成語。
その原理は、建物の中心に監視塔があり、
その中心に向けて囚人の独房が放射状に仕切られて配列されている。
独房には監視塔に面した窓と、建物の外に向かった窓があるだけで、
各独房は仕切りで隔離されている。
囚人の姿は塔からの光線を受けてつねに見えるようになっており、塔の監視所にいる看守から監視されている。
囚人はほかの囚人と接触することはできない。
囚人は看守からつねに監視されていることを意識しているが、看守のようすは知ることができない。
ベンサムは著書『刑罰理論』でこれを理想的な刑務所として提案し、
政府にその採択を進言した。また自らも自己資金で計画を実現しようとしたが、議会は彼の提案を採択しなかった。
しかしやがてこのパノプティコンは、少数の監視者による有効な監視施設として、
各国の刑務所で採用されるようになった。
フランスの哲学者ミシェル・フーコーが
その著書『監獄の誕生――監視と処罰』(1975)のなかでこれを紹介したことによって、
広くその名が知られるようになった。
フーコーはこのパノプティコンを、近代社会で権力をもつ少数者による
多数の個人の監視と教化の仕組みを象徴的に具現したものとみなしている。
[久米 博]
『ミシェル・フーコー著、田村俶訳『監獄の誕生――監視と処罰』(1977・新潮社)
▽郡洋著『日本のパノプティコン――官僚主義支配と集団主義支配の社会』
(1994・三一書房)』
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