1,バイオリンとは

管弦楽や室内楽において中心的役割を果たす擦弦楽器。
中央ハ音の下のト音を最低として上方へ5度間隔に4弦を張った全長約60cmの楽器で,
これを左肩にささえ,右手に持った約75cmの弓(馬の尾毛)でこすって演奏する。
表現力に富み,音域は約3オクターブ半から4オクターブ。
左手は4指を用いて弦を押さえる。左手の正確な音程と適切なビブラート,
右手のなめらかな運弓が要求される(ピチカート,フラジョレットなどの特殊な奏法もある)。
起源は諸説あるが,16世紀はじめに北イタリアで誕生したと考えられ,
ビオルを圧倒して1700年ころには完成。
ビオルとの相違は,ふくらみのある胴,表板と裏板をつなぐ魂柱,f字孔,
4弦でフレットのないことなどで,ビオルとは異なるバイオリン特有の奏法が徐々に開拓された。
棒(木部)が内側に反った現在の弓は18世紀フランスのトゥルト父子によって改良されたもので,
これにより強弱の変化に富んだより複雑なボーイング(運弓法)が開発された。
ビオラ,チェロ,コントラバスも構造的にはバイオリンと同じで,合わせて〈バイオリン属〉と総称する。
16−18世紀イタリアのクレモナの製作者アマーティ,グアルネリ,ストラディバリによるものが名器として知られる。
ただし,今日に残るこれら名器のほとんどは18世紀後半以降,
時代の要請に応えるかたちで改良の手が加えられたもので,
それ以前の音楽は近年オリジナル楽器によって演奏される機会が増えている。
バイオリン属の場合それらはオールド・バイオリン,または通称としてバロック・バイオリン,
バロック・チェロなどと呼ばれ,今日のものに比べ弦を支える駒(こま)が低く魂柱も細いといった特徴がある。
加えてガット弦(弦)を用いるため,モダン楽器とは音色や音量,音の表情などに大きな違いがある。

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