1,デモンストレーション効果とは
経済学で使用される効用関数においては、個々人の消費は、
他の人々からまったく独立であって、個々人の主観的判断に基づいて
決定されると考えられてきた。
しかし、われわれの日常的な行為からも明らかなように、
消費を決定する際には、所得ばかりではなく、
われわれを取り巻く社会環境によっても大きく影響される。
たとえば、低所得の人々の間で生活すれば消費は小さくなる傾向があり、
高所得の人々の間で生活すれば消費水準は高くなる傾向がある。
これをJ・S・デューゼンベリーはデモンストレーション効果とよび、
人々の消費水準は相互依存関係にあることを指摘した。
消費関数は、短期的にみるとC=aY+b
(ここでCは消費、Yは可処分所得=手取り収入、a、bは定数を示す)となるが、
長期的にみればC=cY(cは定数)となるといわれる。
この短期と長期の消費行動の差異を統一的に説明するために、
相対所得仮説、恒常所得仮説、流動資産仮説などの理論が生まれた。
デューゼンベリーは相対所得仮説の立場にたち、
消費水準は現在の所得水準と過去の最高所得水準および
デモンストレーション効果などにより決定されるので、
消費行動は短期と長期では異なると主張する。
なお、消費の相互依存関係を示すものとしては、
このほかにヴェブレン効果とよばれるものがある。
これは、人々が生活程度の高さを誇示することを意図して、
たとえば宝石や毛皮のコートなどを購入する場合であって、
「衒示(げんじ)的消費」といわれる。
[畑中康一]
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