1,エントロピーとは
熱力学系の状態量の1つで,ギリシア語のトロペ (変化) から R.クラウジウスが命名した。
クラウジウスの定理によると,可逆変化において系が得る換算熱量の総和は
過程の始めと終わりの状態だけで定まり,途中の経路に依存しない。
このことから,適当な状態O を基準に定め,系を状態O から任意の状態Z まで
可逆変化させたときに系が得る換算熱量の総和を,
状態Z において系がもつエントロピーと定義する。
エントロピーが状態量であることは,
熱量が状態量でないことと比べて著しい特徴であり,
エントロピーが熱力学で重用される理由もここにある。
可逆変化では,系が得る換算熱量の総和は,
その過程による系のエントロピーの増加に等しいが,
不可逆変化では,前者は必ず後者より小さい。
このことから,外との間にまったく熱の出入りのない系 (断熱系) に対して,
エントロピーの増加 ds については,ds ≧0 ( ds =0 は可逆変化のときだけ) となる。
したがって,断熱系が不可逆変化をする場合は必ずエントロピーが増大し,
可逆変化をする場合だけエントロピーが変らず,エントロピーが減少することは決してない。
これをエントロピー増大の原理というが,熱力学第二法則の1つの表現と考えてよい。
エントロピーの統計力学的な意味づけは,L.ボルツマンによって与えられた。
ある巨視的状態について可能な微視的状態の数を W とすると,
その巨視的状態のエントロピー S は,
S =k logW ( k はボルツマン定数) となる (→ボルツマンの原理 ) 。
言い換えると,微視的状態の数が多いほど S は大きくなり,
エントロピーは不規則さを示す目安となる。
この考えを借用して,情報理論においても,
雑音による通信の乱れは不規則さの増加と考え,エントロピーという術語を使う。
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