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『落ち込み少女』第6章その15





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しかしまだ知り合い程度の人間にこの質問をするのは気が引けた。

それでもこの状況を理解できなかったのでなんでもいいから、

西山から聞き出したかった。

「ひとつ質問していい?」

「ん、何?」

「ふつう一緒に連れていく奴って新田じゃないのか?」

新田とはうちのクラスの男子学級委員だ。

成績優秀で吹奏楽部のプリンスの異名をもつ。

かつて音楽の時間に彼はグランドピアノでクラシック音楽を弾いたおかげで

クラスの女子たちはそれを広めてファンクラブが結成されたそうだ。

お前のソロコンサートじゃないんだぞ、とツッコみたかったが

ひがみにしか聞こえないだろうと思い、やめておいた。

学校では人気者が正義なのだ。

正義に逆らうことはこの世の中では許されない。

僕にとって西山や新田ような同級生はかなりやっかいなのだ

というのは、

西山や新田は僕のような目立たない人間にも笑顔を絶やさずに話しかけてくれる。

しかし僕からしてみれば彼ら会話するときは嫌われることが恐ろしすぎて

同じ年と話しているとは思えないほど緊張するのだ。

なぜなら彼らのような影響力が強い人間に嫌われることあらば、

今後クラスのはみ出し者になる可能性が高いからだ。

西山と新田が並んで立っているだけでみんな二人に視線が集まる。

そんな連中と僕とじゃ何もかも不釣り合いだ。

触らぬ神にたたりなし、というように関わらないことが肝要なのだ。

その神に触れられてしまっている今、僕はこれからどうなるだろうか。

西山は僕の問いかけにしばらくの間考えたあと、

「私、あの人嫌いなの」

と呆れたような笑みを浮かべて誰もいない暗くなったグラウンドを見ていた。




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