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『落ち込み少女』第8章その9






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気がつくと、運転席にはいなかった。

向かいの座席には西山がいた。

お互い、向かい合わせに座っていた

僕は事の成り行きを察知できたが、それでも慌てたように周りを見渡した。

首を動かすだけじゃ足りなかった。

体の向きを変えてでも、外の様子を知りたかった。

そして、わかった

ここはさっき座っていた、最後尾の車両だ。


それで、僕らは、もう駅についていた。


現実に存在する駅だ


そこには、土曜日の夕方にふさわしいほどの人通りができていて、

僕の家の最寄り駅だった。


「とりあえず降りようか」

僕のありきたりな提案に西山は軽くうなずき、ホームの椅子に座った。

僕はまた、西山に向かい合せるように立っていた。

電車での質問以降、顔を合わせることはなくなった。


「羽塚くんは、何でそんな冷静なの?」


遠い方を見ながら、また質問を投げかけられた。

痛いところを棒でつんつんと突かれたように、返答するのにきゅうした


「たぶん…君だけじゃないからかな」

「何が?」

「悩んでいること」


僕らの会話をさえぎるように、電車が通りすぎていった。

さきほど乗っていた電車はもうここにはいない。 「僕は家に帰るよ」

「うん」

僕は人ゴミをかき分け、改札へと向かった。


「きっと誰もが特別で、だから誰もが特別じゃないんだ」


帰り際、誰にも聞こえない声でそうつぶやいた。

でも、そんな配慮をする必要もないほど、

着いた改札は多くの人の喧騒とアナウンスでうるさすぎた


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