そうだ、平木と話したい。
教室に着くと、僕の右隣の席に彼女がそこにいた。
いつも通り、僕よりも早く学校にきてカバー付けた分厚い本を読んでいる。
一学期の初めごろはこんな景色、想像もできなかった。
君が隣にいるだけで心がホッとするんだ。
僕の簡素でつまらない、平々凡々とした日常を壊したのは君だというのに。
「平木」
「どうしたの?」
そうだ、以前とは違う、君は僕の声に振り向いてくれる。
その赤い唇を震わすこともなく、抑揚もない返事でも暖かさを感じる。
「文化祭、一緒に回らないか?」
心臓がバクバク言っている。緊張で手に力が入っている。
呼吸が荒くなっているんじゃないかと思い、思わず喉を潤すように唾を飲み込んだ。
「私でいいの?また片岡くんたちにからかわれるだろうけど」
反応を見る余裕もなく、彼女の言葉が先に来た。
「もっと知りたいんだ。君のことを」
冷静に考えると、告白に近い言葉を言ってしまったが、不思議と言葉がすんなり出てきた。
こんな教室の早朝に格好つけても仕方がないが、それでもちゃんと伝えたかった。
「想い」は言葉にしなければならない。
別に言霊なんて信じるわけじゃない。
ただ僕にとって大切なものを確認しなければならないからだ。
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