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『落ち込み少女』第13章その13

 

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そうだ、平木と話したい。


教室に着くと、僕の右隣の席に彼女がそこにいた。


いつも通り、僕よりも早く学校にきてカバー付けた分厚い本を読んでいる。


一学期の初めごろはこんな景色、想像もできなかった。


君が隣にいるだけで心がホッとするんだ。


僕の簡素でつまらない、平々凡々とした日常を壊したのは君だというのに。


「平木」


「どうしたの?」


そうだ、以前とは違う、君は僕の声に振り向いてくれる。


その赤い唇を震わすこともなく、抑揚もない返事でも暖かさを感じる。


「文化祭、一緒に回らないか?」


心臓がバクバク言っている。緊張で手に力が入っている。


呼吸が荒くなっているんじゃないかと思い、思わず喉を潤すように唾を飲み込んだ。


「私でいいの?また片岡くんたちにからかわれるだろうけど」


反応を見る余裕もなく、彼女の言葉が先に来た。


「もっと知りたいんだ。君のことを」


冷静に考えると、告白に近い言葉を言ってしまったが、不思議と言葉がすんなり出てきた。


こんな教室の早朝に格好つけても仕方がないが、それでもちゃんと伝えたかった。


「想い」は言葉にしなければならない。


別に言霊なんて信じるわけじゃない。


ただ僕にとって大切なものを確認しなければならないからだ。


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