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5月, 2019の投稿を表示しています

『落ち込み少女』第1章その9

その8←ここをクリック まるまる一時間ノートを取っていなかった。 右隣にいるべきはずの彼女が現れてから、 この一時間、 僕にとって黒板の文字、 数式はただの文字でしかなく、 僕の脳は右隣の席を譲らなかったのだ。 まぁ、いいか。物理の授業は教科書通りに進んでいるから、 後で読めばいいだろう。 次の時間は何だっけなぁ ... 現代文か。 僕は物理の教科書とノートを掛けてある手持ち鞄にしまい、 自 分の鞄をまさぐりだした。 いや、 自分の鞄にまさぐるという言い方は問題があるかもなぁ。 ... 何か感じる。何か見られている感覚。 勘違いか … いや、 違う。よく分からないけど、 じわじわ悪寒が走って来た。 僕は、 ふだん連んでいる男友達の方を見た。 しかし、あいつらは月曜の 1 限ということもあってか、 持参した枕を机を置いて寝ている。バカだな、 あいつら。 まだだ。まだ感じる。 前には、 僕を見ているものはいない。 授業を終えた教室全体を見渡してみる。 しかし、 みんな談笑しているか、寝ているかどちらかだ。 僕を見ている人は誰もいない。最後に右隣だ。 まただ。 僕は右隣に恨まれているのか? おそるおそる僕は右隣を見た。 もう、分かるだろう。正解だ。 続き←ここをクリック

『落ち込み少女』第1章その8

その7←ここをクリック しかし、そこまで理想の学生である彼女は 筆記用具を持たず、 おそらく初めて使うであろう机の右端に線に沿って置かれた 教科書 を開くようすもないし、ノートも用意していない。 一体何を考えているんだ? 僕は本来みるべきはずの黒板ではなく、 右隣の席ばかり見ていると、ベル音が聞こえ始めた。 チャイムだ。もう終わりか。 しかし何だがいつもより長く、疲れた 1 限だった気がする。 「え~、今日はここまで。 次回は斜面を滑る 物体の運動方程式について教えるから、 今日の復習と次の予習は必ずするように」 物理のベテラン教師である山形先生は、 まだ話したがっていたが、 この人はチャイムで終了しないと、 次の授業まで引き延ばす教師らしい。 そのクレームの代償として、 チャイムが鳴った瞬間に授業を終わらすと 自分ルールを決めている らしい。 几帳面というのも、生きづらいものだ。 .............あっ!! 僕は机にある筆記用具を片付けていると、 ある重要なことに気づいた。 ノートを取るのを忘れたのだ 。 続き←ここをクリック

『落ち込み少女』第1章その7

その6←ここをクリック 問題は自分の座席に戻った時だ。 例えば授業中でも、 うちの先生の英語の授業なんかでは 隣の席の人とペアになって英文 の訳しあうというものだ。 もうお分かりだと思うが、 とうぜん僕にペアになるべき人なんて存在しない。 最初は英語担当の矢崎先生も僕に気をつかって、 先生とペアを組むか提案されたが、 それは恥ずかしかったのでやんわりと断った。 それ以降、 僕は一人で英文を訳すはめになってしまった。 そんなこんなで、僕の高校生活のスタートラインを狂わした ( もちろん僕の責任でもあるのだが) 張本人が僕の横で授業を受けている。 長く長く伸ばした真黒の髪、 白い肌。 目鼻はくっきりして、口は小さく、唇は赤に近い桃だ。 縁のない丸眼鏡越しに映る瞳ははかなくも美しく見えた。 正直に言って、彼女は綺麗だ。 ただ可愛いのか問われるとそれは少し違う気がした。 まるで、 芸術のような、 僕とは少し違う世界に生まれた人だと思った。 背筋は伸びきって、上半身と腰は垂直、手は膝に置き、 足は体に平行にして、黒板をじっと見ている。 理想の授業態度だ。 かくゆう僕は机に肘をつき、背もたれに寄りかかっている。 続き←ここをクリック

フィボナッチ数列

1,フィボナッチ数列とは 初項と第2項を1とし、第3項以後次々に前2項の和をとって得られる数列。 つまり、 a 1 =1,  a 2 =1,  a n +1 = a n + a n -1  ( n =2, 3, 4,……) で表され、 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34,…… という数列となる。 これはフィボナッチが『算術の書』(1202)のなかで、 次のような問題として提起したものである。 「一つがいのウサギは、生まれて2か月後から、毎月一つがいの子供を産むとする。 初めの生まれたての一つがいがいるとき、 1か月後、2か月後、……のウサギのつがいの総数を求めよ」。   フィボナッチ数列 の相隣る項の比をとってできる数列 a 2 / a 1 ,  a 3 / a 2 ,……つまり、 1, 2, 5/3, 8/5,…… は、無限連分数 を途中で打ち切って得られる分数の列である。 この分数列は (1+ )/2 に収束する。 この極限値は、黄金比(黄金分割の比)として、古来、重要視された数である。 a n は、 と表すことができる。 [竹之内脩] リンク

『落ち込み少女』第1章その6

その5←ここをクリック しかし二週目に突入した頃には、 その虚像への心配も徐々に薄れ、 自分の置かれている現状の危うさに直面していた。 ボッチなのだ。 もう一度言おう。 僕はボッチなのだ。 まずい … 。 これは一人が寂しいとかじゃない(いや、寂しいのもある)、 学校生活を送る上で必要な情報がいろいろ不便になる。  僕はボッチを回避するため、勇気を振り絞って、 ぱっと見て自分に似たタイプに話しかけ始めた。 なぜか人間は教わらなくても自分と 同じタイプの人間を見極めるこ とが出来る。 今では、学校で会えば、 世間話を話し合えるほどの 関係の男友達は何人か出来た。 しかし、 出遅れた感は否めない。 そりゃそうだ。 僕がそいつらに話しかけるようになったのは 入学式を終えて二週間 もたった後のことなのだから。 そのせいか自分から話しかけないと、男友達は寄ってこない。 向こうからこちらにくることは、あまりない。 まぁ、 最初はこんなもんか。 とりあえず、 話しかける奴が出来ただけでも良しとしよう。 続き←ここをクリック

『落ち込み少女』第1章その5

その4←ここをクリック しかし同時にデメリットも存在した。 窓際の最後列には話し相手が 最高でも 3 人しかいないのだ。 1 人は 僕の座席の前の人。 もう 1 人は右斜め前のひと。 最後に右隣の人だ。 しかし、最初に言った 2 人は話しかけづらい。 なぜなら彼らは僕と話すとき、 後ろを向かなくちゃいかなくなる。 それは授業中に先生に注意を受ける確率を高める愚策だ。 だからということもあってか高校生活のスタートライン、 ボッチを回避するためにも 授業中でも話すことができる右隣の人と は、 絶対に仲好くなりたかった。 しかし、いなかったんだ! 僕の右隣にいるはずの平木尊という少女は 高校生活のスタートライ ンから著しく遅れていたのだ。 最初は風邪なのかと思い、 気楽に待っていたが、 一週間たっても一向に学校に訪れず、 さすがに心配になった。 うちの担任の秋山先生に事情を聞いてみたが、 先生は何とも言えないようなしぶった顔をして 僕の求めていた答え をはぐらかした。 あんな顔をされたら、 もう一度聞くことは野暮だろう。 さすがに彼女の家まで行くのは、 気が引けた。 クラスメイトとはいえ、 会ったこともない奴が見舞いに来たら ( 病気と決まったわけじゃないが)、彼女も引くだろう。 当然彼女の家がどこにあるかなんて知る由もないが。 そんなこんなで、 最初の一週間は会ったこともない クラスメイトの虚像ばかり追いか けていた。 続き←ここをクリック