その8←ここをクリック まるまる一時間ノートを取っていなかった。 右隣にいるべきはずの彼女が現れてから、 この一時間、 僕にとって黒板の文字、 数式はただの文字でしかなく、 僕の脳は右隣の席を譲らなかったのだ。 まぁ、いいか。物理の授業は教科書通りに進んでいるから、 後で読めばいいだろう。 次の時間は何だっけなぁ ... 現代文か。 僕は物理の教科書とノートを掛けてある手持ち鞄にしまい、 自 分の鞄をまさぐりだした。 いや、 自分の鞄にまさぐるという言い方は問題があるかもなぁ。 ... 何か感じる。何か見られている感覚。 勘違いか … いや、 違う。よく分からないけど、 じわじわ悪寒が走って来た。 僕は、 ふだん連んでいる男友達の方を見た。 しかし、あいつらは月曜の 1 限ということもあってか、 持参した枕を机を置いて寝ている。バカだな、 あいつら。 まだだ。まだ感じる。 前には、 僕を見ているものはいない。 授業を終えた教室全体を見渡してみる。 しかし、 みんな談笑しているか、寝ているかどちらかだ。 僕を見ている人は誰もいない。最後に右隣だ。 まただ。 僕は右隣に恨まれているのか? おそるおそる僕は右隣を見た。 もう、分かるだろう。正解だ。 続き←ここをクリック