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『落ち込み少女』第8章その5



「前に進もう」 



何をもってこの言葉を吐いたのかはわからない。

ただ、ここで止まっていることが

この絶望的な状況を壊しうるきっかけになるとは思えなかった。

誰もが自覚するべきなんだ。

傷を持ってなぐさめることを、憂いをもって落ち込むことを。

そんな希望を謳う絶望の中を泳ぐように、かきわけて生きていくしかない。

そして、疲れた時は息継ぎをすればいい。

ただずっと息継ぎをして泳ぐことは、進んだことにはならない。

ズルしたって、どこかで帳尻は合わせなきゃいけない。

いくら針をずらしたところで、必ず正しく戻ろうとする原子時計のように。

だから、ここで進むことは自覚すべき事実を知るだけなんだと思う。

西山にとっても、僕にとっても。


でも、何が自分にとって正しいものなのかは人による。


無理強いはしない、単に選択肢を増やしてあげるだけだ。


「わかった」


西山を顔を上げ、足がふらつきながらも、立ち上がった。

疲れているのか、迷っているのか、その返答には自信というものが

わずかも感じられなかった。












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